
現物出資とは
現物出資とは、会社の設立時および増資時に、現金以外の現物で出資を行うことをいいます。会社の設立時には、発起人が1円以上の現金を出資金として準備しますが、不動産や有価証券といった現物を金銭の代わりにすることも可能です。
現物出資は、手持ちの現金が不足している場合や、資本金を増やしたい場合などに用います。
現物出資で会社設立する場合の流れと現物出資をする際の注意点を解説

現物出資で会社設立する場合の流れ
資産の時価調査
定款への記載
必要書類の作成と提出
各種変更手続きの実施
1.資産の時価調査
現物出資する資産の時価を調査します。
資産の時価が500万円以上の場合は、裁判所選任の検査役が調査を実施します。500万円以下の場合は、発起人や取締役全員による調査で判断可能です。
現物に対して調査が入ると、現物の分だけ法人の設立も遅くなるので、認識しておきましょう。
発起人や取締役全員による調査の場合、必要に応じて市場価格の調査や専門家による鑑定を実施し、調査報告書を作成します。
2.定款への記載
会社法第28条に従って、現物出資の内容を定款に記載します。
出資者の氏名と住所
現物出資する資産の商品名や価格といった詳細な情報
出資者に割り当てる設立時発行株式数
3.必要書類の作成と提出
現物出資に必要な書類を作成します。
調査報告書
出資する現物の時価を調査したもの
登記申請書の添付書類として管轄の法務局に提出
財産引継書
発起人の資産を株式発行と引き換えに会社に引き継ぐための書類
資本金の額の計上に関する証明書
金銭以外の資産を出資する場合に必要な書類
※資産の時価が500万円以上の場合は、現金出納帳・仕訳伝票・買掛元帳の提出も必要です。その他、不動産や債権など、出資するものによって、別途必要な書類もあるので確認しましょう。
4.各種変更手続きの実施
自動車や不動産、有価証券などは、発起人から会社への名義変更が必要です。
会社設立後に、登記事項証明書を提出して行います。

現物出資をする際の注意点
資本金に対して現金の割合が少なくなる
不足額の支払い義務
現物出資できる財産は事業で使用するものに限られる
出資者が所得税の課税対象となる
資本金に対して現金の割合が少なくなる
現物出資する際の注意点には、資本金に対して現金の割合が少なくなることがあげられます。現物出資で資本金を増やしても、手元のキャッシュが増加するわけではないからです。
現物出資で会社を設立する場合は、事業開始後に必要となる資金を予測し、資金計画を立てておくことが重要です。
不足額の支払い義務
資産を本来の価値よりも多く見積もって現物出資を行った場合、不足額が発生します。
その場合、会社法により、発起人および設立時取締役で連帯して不足額を支払うように定められています。
現物出資できる財産は事業で使用するものに限られる
現物出資する際の注意点には、現物出資できる財産は事業で使用できるものに限られることです。自動車や不動産などでも、事業とまったく関係ないもの、事業でまったく使わないものは、現物出資の対象として認められない可能性が高いです。
現物出資をする際には、出資するものが事業と関係するものかどうかも、考慮するようにしましょう。
出資者が所得税の課税対象となる
現物出資は税務法上、出資者が資産を売却したこととされます。そのため、現物出資をした出資者は所得税を支払わなければなりません。
所得税の計算方法は、出資した現物の種類によって異なります。
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