債権流動化とは?種類とメリット・デメリットを解説
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- 3月5日
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更新日:4月6日

債権流動化とは
債権流動化とは、売掛金や手形などの債権を売却することで支払期日より前に現金化する方法のことです。
企業間の取引では一般的に、商品やサービスを納品してもその場で売り上げが入金されず、請求書発行の翌月または翌々月に支払われる売掛という契約形態が取られます。
急激に資金繰りが悪化して手元の資金がなくなってしまった場合には、債権流動化を利用して資金を手に入れることができます。
債権流動化とは?種類とメリット・デメリットを解説

債権流動化の種類
ファクタリング
売掛債権担保融資(ABL)
手形割引
売掛債権証券化
ファクタリング
ファクタリングとは、企業などが保有している売掛金をファクタリング会社に売却して、債権を支払い期日前に現金化するサービスです。債権流動化による資金調達の代表的な方法といえます。
売掛債権を売却するため手形などがなくても、売掛先に対する請求書があればファクタリングサービスを利用できます。債権を流動化する方法の中でも、より早く資金を調達できる方法でもあり、取引形態によっては最短で即日入金も可能です。
ファクタリングの特徴
資金調達までの時間が短い
他の方法と比較して手数料が高い
売掛債権担保融資(ABL)
経済産業省・中小企業が売掛債権の活用方法として推奨している一つが、売掛債権担保融資(ABL)です。
売掛債権を担保に銀行から融資を受ける資金調達方法で、利息の上限が決められているため、比較的安いコストで資金を集められます。信用保証協会が提供する売掛債権担保融資保証制度など、1%以下の低い利率で利用できるサービスもあります。
売掛債権担保融資の特徴(ABL)
手数料が発生するが利率はファクタリングの手数料よりも安い
ファクタリングよりも審査が厳しく資金調達まで時間がかかる
手形割引
手形割引とは、決済期日前の受取手形を、銀行や手形割引業者で現金化するサービスです。
売掛債権のうち受取手形を使う方法であるため、手形が決済されずに不渡りになると、利用者は弁済義務を負います。
ファクタリングは売掛債権を売却する契約であるのに対し、手形割引は融資として扱われる違いがあります。
手形割引の特徴
手形取引を行なっている業者しか利用できない
ファクタリングなどに比べて手数料は安い
売掛債権証券化
売掛債権証券化とは、会社が保有する売掛債権を特別目的会社(SPC)に譲渡し、証券化して投資家に購入してもらうことで現金化する方法です。SPCとは企業の資産流動化や資金調達を目的に設立される会社のことで、 売掛債権の証券化はSPCを通じてのみ行えます。
売掛債権証券化の特徴
証券化された売掛債権が全て投資家に購入される保証がない
手続きが煩雑なため中小企業は利用が難しい

債権流動化のメリット
資金調達の難易度が低い
スピーディな資金調達が可能
資産のオフバランス化が可能
資金繰りを改善できる
資金調達の難易度が低い
債権流動化の最も大きなメリットは、銀行融資などに比べてより簡単に資金調達ができるという点です。
銀行や公的金融機関から融資を受ける場合、その企業に弁済能力があるか厳密な審査を通過する必要があり、資金繰りに問題がない状況であっても、担保として企業の資産を差し出すことを要求されるケースもあります。
それに対して売掛債権を売るだけで資金調達ができる債権流動化は、融資に必要な審査や担保の提出はありません。
そのため債権流動化による資金調達の難易度は融資に比べて大幅に下がることになります。
スピーディな資金調達が可能
債権流動化の中でも売掛債権担保融資や売掛債権証券化は時間がかかるものの、ファクタリングや手形割引ではスピーディな現金化が期待できます。
特にファクタリングでは契約の形態によって、現金化までの時間は異なるものの、2社間ファクタリングの場合は即日〜翌日の資金調達ができる場合もあります。
資産のオフバランス化が可能
債権流動化には自社資産のオフバランス効果もあります。オフバランスとは会社の保有債権や過剰在庫、遊休資産などを売却し、貸借対照表に計上される会社の資産を小さくすることです。
債権流動化で債権を現金化し、現金で負債を弁済できると、貸借対照表から資産と負債を同時に消すことも可能です。資産と負債を小さくできると自己資本比率が改善されます。
また資産である売掛金を減らすことで、総資産利益率(ROA)の改善も可能です。ROAが改善すると少ない資産で多くの利益を挙げたと認められるため、企業の評価を高める効果もあります。
資金繰りを改善できる
債権流動化によって、資金繰りを改善できます。売掛債権は回収サイトが短くなるほど資金繰りが楽になり、回収サイトが長くなるほど資金繰りは苦しくなります。
債権流動化によって回収サイトを短縮できると、売掛金の流動性を高められ、資金繰りを改善できるようになるでしょう。
債権流動化のデメリット
手数料や利息などのコストが発生する
弁済義務が生じる場合がある
手数料や利息などのコストが発生する
債権流動化のデメリットは、手数料や利息などの調達コストがかかることです。ファクタリングなら手数料がかかり、売掛債権担保融資なら利息を支払わなければなりません。
※債権流動化にかかるコストの目安
ファクタリング 額面の2~30%(ファクタリング方式や売掛先の信用度でも変動)
売掛債権担保融資 年利1~15%(売掛債権の担保価値でも変動)
手形割引 手形額面の2~15%(支払い期日や業者によっても変動)
弁済義務が生じる場合がある
債権流動化は、状況によって弁済義務が発生することについてはあらかじめ把握しておく必要があります。
弁済義務とは担保とした売掛債権や手形が回収不能になった際に、資金調達元に債権の額面価格を支払う義務のことです。
要するに担保とした売掛債権の相手先企業が倒産して、債権回収ができなくなった場合でも、調達した資金の弁済義務は消滅しないということです。
売掛債権を売却することで資金調達を行うファクタリングの場合、この弁済義務が発生しないケースはありますが、弁済義務がない場合、貸し倒れリスクの分だけ手数料が高くなる傾向があります。
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