
業務委託後のトラブルを避けるため、業務委託契約書には委託内容を明確に記載しておく必要があります。この記事では、業務委託契約書の主な記載項目と業務委託契約書を作成する際の注意点を解説します。
業務委託契約書とは
業務委託契約書とは、業務を委託する側と業務を受託する側が締結する契約書です。 業務委託契約書には、委託する業務内容や条件、問題が発生した場合の対処方法などが記載されています。 なお、口頭やメールで業務内容と条件を連絡して依頼した場合でも、委託者と受託者双方の合意があれば、業務委託契約は成立します。
業務委託契約書の記載事項と業務委託契約書を作成する際の注意点を解説

業務委託契約書の主な記載項目
業務内容
委託料
契約期間
支払条件・時期
経費
成果物
再委託
秘密保持
納品期限
反社会的勢力
禁止事項
契約解除
損害賠償
契約不適合責任
有効期限
業務内容
業務内容とは、どのような仕事をどのような形で任せるのかなどです。
曖昧な状態で契約を結んでしまうと、認識の違いなどによるトラブルが発生する可能性があるため、委託する業務内容は具体的に記載しましょう。
委託料
委託料とは、報酬として支払う金額や時期、方法などです。
成功報酬など、一定の要件に応じて報酬を算出する場合は、算出方法についても記載しておきましょう。
契約期間
契約期間とは、業務を委託する期間です。
自動更新の有無や中途解約の条件などの記載も必要です。
支払条件・時期
支払条件・時期とは、報酬の支払いにおいて満たすべき条件と、支払いを行うタイミングのことです。報酬が発生する条件と支払時期、支払い方法や着手金の有無などの条件を取り決めて記載します。
経費
経費とは、受注者が業務を行う上で支払った費用のうち、経費計上を可能とする範囲のことです。業務を行う上で発生した交通費や通信費などの経費が該当します。
成果物
成果物とは、受注者が委託された業務を完成させた結果として生じる目的物です。
業務の性質によって異なりますが、建築工事の業務であれば、完成した建物などが成果物となります。納品された成果物や業務遂行の過程で発生した著作物などについて、誰が著作権や知的財産権を保持するのかも記載しておきましょう。
再委託
再委託とは、発注者から委託された業務を第三者に再び委託することです。
受託者が業務を第三者に再委託することが可能かを記載します。再委託を認める場合は、その条件についても記載します。
秘密保持
秘密保持は、秘密保持契約書を締結することで、秘密情報を予定している用途以外で使用したり他者に開示したりすることを禁止します。委託した業務を遂行する上で知り得た情報を第三者に開示しないことを記載します。
納品期限
納品期限とは、いつまでに業務遂行による成果物を納品するべきか、その期限です。
契約段階で無理のないスケジュールを立てることが必要です。
何らかの事情で間に合わなかった場合には、遅延理由を通知することと、新たな納入予定日に関する指示を受けることも記載しておきましょう。
受注側は、悪質な発注者が報酬の支払いを遅らせるために検収をしないトラブルに巻き込まれないためにも、検収期間が過ぎても連絡がなければ自動的に報酬の請求が可能となる契約を取り交わしておくと安心です。
反社会的勢力
反社会的勢力とは、暴力団を始めその組織の実態を隠し運営する企業や関係企業、活動実態のない政治団体を装う新興団体などです。
委託者、受託者が反社会的勢力と関係を持っている場合や、反社会的勢力だった場合の契約解除について記載します。
禁止事項
禁止事項とは、発注者が受注者に対し、業務を行う上で禁止する事柄です。
業務の遂行にあたって受託者に禁止することがある場合、具体的に記載しましょう。
契約解除
契約の解除は、 契約当事者の一方の意思表示によって、契約の効力をさかのぼって消滅させること をいいます。契約違反や契約不履行などがあった場合の契約解除について記載しましょう。
損害賠償
損害賠償とは、契約解除・契約違反・債務不履行などがあったときの損害賠償責任やその額です。損害が絡むトラブルが発生したときに備えた項目であり、責任の所在、範囲、期間、金額などを具体的に設定しておくとよいでしょう。
契約不適合責任
契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときに、売主が買主に対して負う責任をいいます。
請負契約では、納品された成果物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合の責任(履行の追完、報酬の減額、損害賠償、契約解除など)を記載します。
有効期限
有効期限とは、契約が有効とされるまでの期間です。
提供する情報の性質により変動するといえますが、重要な事柄は無期限で設定されるケースもあります。長期的で継続した業務の委託においては、自動更新などに関する内容も盛り込んでおくと安心です。

業務委託契約書の注意点
業務内容・期間・金額などは具体的かつ明確に記載する
委託内容について具体的かつ明確な記載がないと、業務を遂行していく中で受託者からのクレームの元となったり、後々の後にトラブルになったりする可能性があります。
後々のトラブルやクレームを未然に防ぐためにも、業務内容や範囲、報酬の支払い期限など、どの項目においてもできるだけ具体的かつ明確に記載するようにしましょう。
また、知的財産権の扱いや秘密保持事項の記載も重要です。例えば、受託者が機密情報を漏らしてしまった場合であっても、損害賠償や各責任などは委託者に課せられる場合があります。受託者の行動によって委託側に思わぬ損害が発生した場合を想定し、責任の範囲や期間、賠償金の金額なども明確に記載しておくようにしましょう。
業務委託契約書には収入印紙が必要
紙媒体で業務委託契約書を作成する場合は、契約金額に応じた収入印紙が必要です。業務委託の契約期間が3ヶ月以上になるのであれば、一律で4,000円分の収入印紙を用意しなければなりません。業務委託契約書を何通も作成する場合は印紙代がかかるだけでなく、管理や作成にも手間がかかってしまうため、電子契約で業務委託契約書を取り交わすのがおすすめです。電子契約は収入印紙の貼付が不要なので、パソコンやスマートフォンなどから業務委託契約を締結できます。
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